目にも心にもやさしい木目の科学

 目にやさしい自然な色合いと表情、直接素肌に伝わってくる温もり、気分を落ち着かせてくれる芳香、そして室内空間の調湿作用など・・・これらは、天然素材である無垢木材ならではの特徴です。
 ここでは、そんな無垢木材の特徴のなかから、木目の視覚的効果について取り上げます。

木目はなぜできる?

 木目とは、木材の表面に現れる模様のこと。その形状は木の生長記録ともいえる年輪や土の中の水分等を吸い上げる導管などの配列によって変化するため、同一の樹でもまったく同じ木目になることはありません。
 また、木目は木の切り方によって異なる模様があらわれます。年輪に対して直角に切り出したものが「柾目」で、まっすぐな線となってあらわれます。逆に年輪に対して平行に切り出したものを「板目」といい、波形や山形の変化に富んだ模様となります。

木がもたらす効能

 木目は自然によってつくりだされた意匠という側面だけでなく、身体的・精神的な効能を与えてくれます。
 紫外線を吸収し、まぶしさを和らげる

 太陽の光をたくさん浴びることができる日当たりのよい部屋はとても気持ちがよいものです。しかし、必要以上の光は、まぶしいだけで、目を疲れさせる原因にもなりかねません。それは、太陽光線の中に有害な紫外線が含まれているため。紫外線とは、波長が可視光線である紫色の波長(400〜440ナノ・メートル)よりも小さな波長で、380ナノ・メートル以下の光のことです。
 アルミニウム・コンクリート、木材の光の波長ごとの反射率を比較すると紫外線の反射が最も少ないのが木材です(下図参照)。木材は有害な紫外線を吸収するため、木材を使われている部屋は目にやさしい光であふれているということになるでしょう。
光の波長ごとの反射率<br>資料:「木を生かす」(財)日本木材備蓄機構,1989

光の波長ごとの反射率
資料:「木を生かす」(財)日本木材備蓄機構,1989

 さらに、木材には金属やプラスチックとは異なる独特の光沢があり、木材特有のテクスチャーをつくりだしています。木材の表面は肉眼では見えない小さな凸凹があり、それによって光が拡散されるため、木材から反射される光は、程よい光沢となって目に映るのです。実はこの光沢こそが、本物の木と偽物の木との最大の違いで、人間の目はそれを無意識に感じ取ってしまうといわれています。

絶妙な木目の間隔が生み出す“1/f ゆらぎ”

 樹木の年輪の間隔は「1/fゆらぎ」といわれています。「1/fゆらぎ」とは、ちょっと不思議な言葉ですが、“規則正しさ”と“不規則さ”がちょうどよいバランスで調和したパターンのことをいいます。このゆらぎは、“自然界”によって生み出されたリズムで、この不安定さが人に心地よさを与える効果があるといわれています。
 年輪や木目は、等間隔のように見えても実は微妙なズレがありまさにこの“秩序のなかの無秩序”こそが視覚を通して人の感覚を心地よく刺激するのです。
その他、「1/fゆらぎ」を持つものとしては、小川のせせらぎや波の音、星の瞬きなどがあります。赤ちゃんがお母さんの胸に抱かれていると、いつの間にかスヤスヤと寝てしまうのは、人間の心拍の音が「1/fゆらぎ」であるため、ともいわれています。

 木目の模様・光沢もまた、木が味わい深く、心がやすらぐといわれる要因のひとつでしょう。