深い赤褐色と艶のある木目が魅力のサペリ。各方面で需要が高まる一方で、国際自然保護連合(英:International Union for Conservation of Nature and Natural Resources、IUCN)のレッドリストに掲載されるなど、生態保存のため計画的な利活用が必須となっている樹種です。今号では、環境に配慮して調達されたマルホンのサペリ材をご紹介いたします。
サペリ(学名:Entandrophragma cylindricum)は、西、中央、東アフリカの熱帯雨林に広く生育するセンダン科の落葉広葉樹で、別名サペリマホガニー、ゴールドコーストシダーなどとも呼ばれます。サペリという名は古くからヨーロッパとの貿易が盛んだったナイジェリアの港町サペレに由来します。サペリは、樹高が40~60メートルにもなる大木で、枝のないまっすぐな樹幹は25~30メートルに達し、直径は胸高で1~1.5メートルにもなります。ビルの10階~15階に相当することから、サペリがどれほど大きな樹木であるかを想像することができます。
杢とは、製材したときに木目に現れるさまざまな模様のことを指します。木の細胞(繊維)が通常とは異なる配列に並ぶことによって生まれる杢は二つとして同じものはなく、木材一つ一つが持つ個性とも言えます。大木から切り出されるサペリの板材は、リボン杢、縮み杢、泡杢、斑紋杢などさまざまな特徴的な模様が現れます。そのうえ、年々深みを増していく赤褐色が美しく、適度な堅さと加工性を持ち合わせているため、高級家具や内外装建具、楽器、ボートなど幅広い用途に使用されています。最近ではテイラー、マーティンなど多くの楽器メーカーに採用され、年々認知度が増しています。
■リボン杢
サペリに現れる杢の中で最も代表的なものがリボン杢です。リボン杢とは、熱帯産によく見られる交錯木理の材を柾挽きした材面に、旋回方向の異なる繊維がほぼ一定の周期で現れる縞模様です。縦に伸びるストライプ模様は、空間に奥行きを生み出す効果もあります。
■縮み杢
木目が波状に縮んでしわがよったように見える模様を縮み杢と言います。繊維方向の木目とは直交するように現れるのが特徴です。バイオリンのボディーの背面によく使用されることから、「フィドルバック」と呼ばれることもあります。
■泡杢
円形の模様が散在するこの杢は、水面に浮かび上がる泡に似ていることからこのように呼ばれます。杢について、詳しくはこちらで詳しくご紹介しております。
家具や楽器など、幅広い用途を持つサペリですが、もともとは調達が困難になった同じく茶褐色のマホガニーの代替として使われ始めたという歴史があります。
ウォールナット、チークと並んで世界三大銘木であるマホガニーは、キューバなどのカリブ諸島を原産とする樹種です。ヨーロッパでは家具用木材というと長年オークとウォールナットが主流でしたが、18世紀初頭、大寒波によりウォールナットの調達が難しくなったことで、その代替として大衆の心を掴んだのがキューバンマホガニー(Swietenia mahogani)でした。ところが、列強諸国の膨大な需要に応えるため乱伐が繰り返された結果、キューバンマホガニーは瞬く間に希少材となり、現在ではほぼ絶滅状態にあるとされています。それに代わる良材として使用され始めたホンジュラスマホガニー(Swietenia macrophylla)ですが、こちらもキューバンマホガニーと同様に乱伐が繰り返され年々入手困難になりました。さらに1973年に採択、1975年に発行されたワシントン条約(「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引における条約」英:Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora(CITES))によって、マホガニーの天然木の貿易には制限が設けられています。現在商業的に入手可能な唯一のマホガニーは、このホンジュラスマホガニーを東南アジアなどの熱帯地域で植林したものです。
そこで、マホガニーに代わってより手に入れやすい材として広く普及することとなったのが、よく似た色・表情を持つサペリでした。別名サペリマホガニーと呼ばれることからも、サペリがマホガニーによく似ていることをうかがい知ることができます。
以上のように、マホガニーの代替として世界中に普及したサペリは、アフリカで主要な商用木材であり、日本だけでなく欧米やアジア諸国へも多く輸出されています。ところが、サペリも過去三世代で20パーセントを超える個体数の減少が見られ、国際自然保護連合(IUCN)*1が作成するレッドリスト*2に掲載されました。レッドリストは絶滅危機の度合いによってランク分けされており、データ不足等でリスク評価されていないものを除くと、「絶滅(Extinct)」「野生絶滅(Extinct in Wild)」「絶滅寸前(Critically Endangered)」「絶滅危機(Endangered)」「危急(Vulnerable)」「低リスク(Lower Risk)」の6段階に分けられます。サペリはこのうちの「危急」に分類されています。「危急」とは、中期的な将来において、野生絶滅のリスクが高い場合と評価された生物が分類されるカテゴリーです。それゆえ、現段階で絶滅の危機は少ないとしても、今後マホガニーのように絶滅の危機に瀕することのないよう、きちんと環境に配慮した計画的な伐採のもと、木材を利用していくことが必須条件となります。
*1国際自然保護連合(IUCN):1948年に創設された国際的な自然保護団体。国際本部はスイスのグラン
*2レッドリスト:国際自然保護連合(IUCN)の中の「種の保存委員会」が毎年絶滅の恐れのある生物をリストアップし、データーベースにまとめたもの
マルホンでは、サペリに限らず、すべての樹種において持続可能な木材資源保持に取り組んで調達しています。先進的に木材及び森林の環境保全に取り組んでいるヨーロッパやアメリカ、オーストラリア等の違法伐採禁止法を基礎に、独自のデューディリジェンスプログラム(英:Due Diligence Program, 以下、DDと言う。)を策定し、定期的に原産地訪問も含めたDDを実施しています。DDとは、様々なリスク(当社の場合は、木材の合法性や森林の環境保全に係るリスク)を詳細に調査する手続きのことを言います。当社では、木材の合法性や、木材資源持続への貢献を評価し、低リスクのものを調達しています。
マルホンのサペリの場合は、違法伐採木材を厳しく罰する規則であるEU木材規制(英:European Union Timber Regulation, EUTR*3)に基づく証明を取得した材のみを仕入れています。
*3 EUTRとは2010年に採択され、2013年3月に発効された法律。EU市場における違法伐採材の取引を禁止している
マルホンのサペリフローリングは、サイズ展開も豊富です。120mm巾の乱尺フローリングに加えて、長尺乱巾張りのできるプレミアムフローリングがあります。プレミアムフローリングは、巾100mm・130mm・150mm・180mmという無垢材ではめずらしい幅広に加えて、長さ2730mmにて定尺というダイナミックなサイズに仕上げており、サペリの魅力を存分に引き出せるフローリングです。樹高40メートル、直径1メートルを超える大木だからこそ、このような幅広長尺仕立てが可能となるのです。4種の巾をミックスして張ることによって床全面に立体感が生まれるとともに、リボン杢の流れる長尺のピースが空間に奥行きを与え、アフリカの大地を彷彿とさせるようなスケールの大きなインテリアに仕上げることができます。
また、サペリではパネリング(壁・天井材)やその他内装部材もご用意可能です。フローリングと同樹種で合わせることで統一感のある空間を作り出すことができます
画像5:(左)サペリ カウンター材/(右)サペリ 階段材
<参考文献>
ギブス,ニック (2005) 『木材活用ハンドブック』(乙須敏紀訳) 産調出版.
ウォーカー,エイダンほか (2006) 『世界木材図鑑』 (乙須敏紀訳) 産調出版.
“EU MAG”, [online] http://eumag.jp/ (参照2019-12-18).
“IUCN日本委員会”,[online] http://www.iucn.jp/ (参照2019-12-18).
“World Agroforestry”,[online] http://new.worldagroforestry.org/ (参照2019-12-18).
マルホンの無垢木材について
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無垢木材の「質感」・「香り」・「あたたかみ」を実際に体感いただくため、 株式会社マルホンでは、浜松と東京、大阪、福岡の4箇所にショールームを開設。 いずれもフローリングやパネリングを始めとする、国内外の豊富な木材をご紹介しております。
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