綺麗な柾目とやわらかい色味が特徴の木目を持つ針葉樹、英語ではソフトウッド(Softwood)と呼ばれています。背が高くまっすぐに伸びる樹種が多いため、長尺で継ぎ目のないパネリング(壁・天井材)製品に仕上げることができます。
今回は、当社が取り扱う針葉樹パネリングの原材料の中でも、特にその一大産地である北米原産のものについてご紹介いたします。
北米大陸は、針葉樹の一大産地です。広葉樹と針葉樹の混交林はもちろん、ロシア語で「タイガ(Тайга́)」と呼ばれる広大な針葉樹林がユーラシア大陸から北米大陸まで達しています。世界の木材生産量を見ると、総生産量においてはアジアが群を抜いていますが、針葉樹に限っては北米が全体の約25%をも占めていることが分かります。
画像1:世界の木材生産量(単位:100万㎥)
このように針葉樹の大規模な産地であること、さらには後述の目の詰まった良質な材が採れることが北米地域の特徴です。一般的に、木材の年輪は寒冷地ほど育ちが悪いため目が詰まっており、温暖地ほど目が粗いという傾向があります。目が詰まっているものは寸法安定性が高く、質が良いため、目が粗いものと比べて価値も高いとされています。
日本に北米材がもたらされたのは、1854年のペリー提督来航の際に幕府に送られたベイマツ材が最初であるといわれています。その後、明治時代から「メリケン松」という名前で取引が開始され、1923年の関東大震災の際には木材需要の増加により、輸入量が急増しました。第二次世界大戦の開戦に伴って一時的に輸入がストップしたものの、現在に至るまで建築用木材として重用されています。
なお現在、日本で消費される木材のうち70%近くが輸入材です。そして、北米産材はそのうちの45%を占めているのです。
画像2:寒冷地帯ダグラスファー
画像3:温暖地帯ダグラスファー
北米は、ワシントン州、オレゴン州、カリフォルニア州北部にかけて走るカスケード山脈を中心として気温が低いため、良質な目詰まり材の生産に最適な気候です。産地である山脈から由来し、目詰まり材をカスケード材、目粗材をコースト材と呼ぶこともあります。
北米針葉樹と一口に言っても、その種類は多岐に及びます。ウェスタンレッドシーダー、ポンデロサパインなど一般に建築部材としてよく知られているものや、鉛筆の材料でもあるインセンスシーダーなどさまざまです。
今回は当社でも取り扱いのあるスプルース、ピーラー、ベイヒバ、ウェスタンレッドシーダーの4樹種についてご紹介いたします。
■スプルース
学名: Picea
画像4:スプルース施工事例
マツ科トウヒ属のスプルースは、別名ベイトウヒ(米唐桧)とも呼ばれます。スプルースでは、シトカスプルースとホワイトスプルースが木材としてはよく知られています。その中でも日本国内ではシトカスプルースが一般的です。日本の木材業界では「アラスカ桧」とも呼ばれるように、桧に近く滑らかな木目を有しています。そのため、高級材である木曽桧の減少とそれによる価格高騰に伴い、桧の代替品として和室の造作部材や天井材に使用されてきました。近年では、スプルースの生産量も減少しているため、貴重な木材となっています。
また、加工がしやすいため、楽器ではアコースティックギターのトップ単板や、木製飛行機の材料としても使用されています。2015年まで世界最大の飛行機であった、別名スプルースグースとも呼ばれるH-4ハーキュリーズもスプルースを躯体材料に使用していました。
■ピーラー(ダグラスファー)
学名:Pseudotsuga menziesii
画像5:ピーラー施工事例(天井・壁)
マツ科トガサワラ属のピーラーは、別名ダグラスファー、ベイマツ(米松、いわゆる「もみの木」)とも呼ばれます。樹齢が長く、大径木のオールドグロス(Old Growth)材の中でも、目詰まりのものだけを特にピーラーと呼びます。前述のようにペリー提督来航時に日本に初めて入ってきた輸入材であるため、歴史的な意義も深い樹種です。ダグラスファーは、非常に樹高が高く、北米産針葉樹において20%の産出量を占めるため、構造材や家具など多岐に渡り使用されています。ピーラーと呼ばれるものは希少かつ高価なため、天井材などの内装部材としての使用が主流です。日本でも、見せる内装部材のみならず横架材などにも用いられ、幅広い用途で使用されています。樹脂分を多く含むため、当社では煮沸処理によるヤニ抜きを行い、内外装パネルとして仕上げています。
■ベイヒバ
学名:Chamaecyparis nootkatensis
画像6:ベイヒバ 施工事例(壁・天井)
ヒノキ科イトスギ属で、別名イエローシーダーとも呼ばれます。匂いや色味が桧葉に良く似ていることからベイヒバと名付けられました。アラスカシーダーとも呼ばれますが、Alaska cedarを直訳したアラスカ桧とは異なります。
イエローシーダーの精油成分にはヒノキチオールやカルバクオールを含み水に強く、耐久性や防腐・防虫性も高いため、日本国内では和室造作材や天井材などの内装材だけでなく外装材や水周りにもよく使用されます。
■ウェスタンレッドシーダー
学名:Thuja plicate
画像7:ウェスタンレッドシーダー 施工事例(壁・天井)
別名ベイスギ(米杉)とも呼ばれますが、ヒノキ科ネズコ属であり米国産の杉ではありません。明治時代に非常に高価になっていた秋田杉の代替品として使用されていたことや杉に近い色味であることからベイスギと呼ばれるようになりました。また、北米から日本に最初に商業輸入された樹種でもあり、明治17年には東京の木場で取り扱われていたという記録もあります。
ウェスタンレッドシーダーはイエローシーダー同様に抗菌性を持つヒノキチオール(Hinokitiol)やネズコン(Nezukone)を含んでおり、防虫・防腐性、耐久性が非常高く、内装材の他にも外装材やデッキ材としても使用されます。
・アメリカ合衆国
アメリカ合衆国は、年間8,000万㎥を超える製材を産出する世界最大規模の木材製材産出国ですが、厳しい森林管理に基づき計画的な伐採・植林を行っています。森林の持続可能性を考える上で、計画的な伐採はもちろん、伐採後に行う植林は必要不可欠な作業です。植林は毎年16億本程度行われており、生産量・輸出量は増加傾向にあるにも関わらず、70年前よりも樹木は増え続けています。
中でもオレゴン州は、全米最大の針葉樹製材産出州で、数百年前から生産・輸出を行っており、今日ではアメリカ合衆国全土の針葉樹製材生産量のうち、約20%がオレゴン州によるものとなっているのですが、動植物の生息環境や環境バランスの保全を目的として、1971年にオレゴン州森林施業法を制定し森林管理の規制を行っています。さらに1973年には、森林や農地を保護するための土地利用計画を義務付けた「オレゴン州の土地利用計画制度(上院法案第100号)」も制定されました。・カナダ
国内の森林のうち94%が公有林というカナダでも、政府主導の「保続生産体制」のもと、アメリカ合衆国と同じく、計画的な伐採・植林が実施されています。年間伐採面積を伐採可能な森林の1%未満に抑えるとともに、年間約6億本の植林を行うなど、20年以上先を見越した森林管理計画が定められているそうです。これらの取り組みにより、アメリカに次ぐ木材製材産出国であるにもかかわらず、カナダ国内の森林は過去20年以上にわたってほぼ減少していません。
画像8:スプルース立木
画像9:ダグラスファー立木
木目が美しく、寸法安定性が高い北米産針葉樹。どの材も和風にも洋風にも相性が良く、長尺であることやその色味から空間に広がりと暖かさをもたらしてくれるはずです。じっくりと細かな違いを吟味して、お好みの壁・天井材を探し出してみてください。
<参考文献>
・須藤 彰司(1997)『カラーで見る世界の木材200種』産調出版株式会社
・宮本 茂紀(1996)『原色インテリア木材ブック』建築資料研究社
・一般社団法人全国木材組合連合会(発行年不明)“1-2 世界の木材生産及び消費量はどのくらいあるのでしょうか。”[online]http://www.zenmoku.jp/ippan/faq/faq/faq1/209.html(参照2019-4-23).
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