最近は床暖房のニーズが高く、床暖房に無垢フローリングを使いたいという方が増えています。しかし、エアコンや暖炉などとは異なり床材を直接あたためる床暖房は、フローリングにとっては厳しい環境となります。そのため、床暖房に使用するフローリングには、通常のフローリング以上の寸法安定性が求められます。また、木材は幅が広くなるほど動きが大きくなるため、床暖房で幅広の無垢フローリングは難しいと言われています。
今号では無垢の質感と高い寸法安定性、そして幅広を実現できる床暖房対応の「挽板フローリング」についてご紹介いたします。
表面材を作るにはさまざまな方法があります。スライサーを使って薄くするスライス式や、回転させた丸太に刃物を当てて桂むきのように製材するロータリー式など効率よく製材することができる方法がありますが、マルホンでは最も手間のかかる「鋸挽き」によって製材された挽板を採用しています。「鋸挽き」による挽板は筬鋸(おさのこ)*という機械を使って製材していきます。鋸の厚みは1mm程度あり、スライス式やロータリー式と比較すると鋸くずが出るため歩留まりは落ちますが、厚みのある板を作ることができます。一般的なその厚みは2mm以上で、無垢材のような見た目と質感を楽しむことができます。
*筬鋸:鋸の刃を往復運動させて木材を切断する機械のこと
鋸挽 | スライス式 | ロータリー式 |
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筬鋸(おさのこ)と呼ばれる機械を使って、原木を鋸で挽いて板を切り出す方法。鋸刃の厚み分だけくずが出るため歩留まりは悪くなるが、厚みのある板をとることができる。「挽板」と呼ばれ、その厚みは2mm以上。 | 製材木取りしたフリッチからナイフで平削りする方法。スライサーと呼ばれる機械で切削され、ロータリー単板より裏割れの少ない、良質な、より薄い単板が取れる。「スライス単板」および「突板」と呼ばれる | ロータリーレース(単板切削機械)と呼ばれる機械を使って円筒状の原木を回転させ、外周から大根の桂剥きと同様の方法で切削する方法。薄くて広い面積の「単板(ベニヤ)」を連続的に切削することができる。 |
ヨーロッパのフローリングメーカーの連合会であるFEP(The European Federation of the Parquet Industry)では、複合ローリングを下記の様に3種類に分けて規定しています。この規定は消費者が本物のフローリングへの投資価値を理解できるようにするために導入され、中でも表面材が2.5mm以上の複合フローリングは“Parquet(パーケット)” という特別な名称で呼ばれ、複合フローリングの中でも最高級品として扱われています。
“Parquet”の定義は「再仕上げが可能なフローリング」と定められています。「再仕上げ」というのは、表面をサンディングしてリフレッシュすることです。NOFMA(National Oak Flooring Manufacture’s Association)のガイドラインによると、サンディング作業では1/32インチ(約0.8mm)以下の最小限の木材を取り除くべきだと明記されています。1916年に記録されている最も薄い無垢フローリングの詳細図には4/32インチ(約3.2mm)の 表面化粧板があり、それを現場でサンディングして仕上げています。つまり、最低でも3/32インチ(約2.4mm)厚みがあり、更には、将来的に少なくとも一度は再仕上げすることが可能であったとされています。このことから分かる通り、再仕上げをするためには3/32インチ(約2.4mm)以上の厚みが必要になるのです。
再仕上げすることで、何世代にもわたって使用することができます。無垢フローリングが持つ「再仕上げが可能」という特徴は、良いものを大切に長く使うというヨーロッパの価値観を象徴しており、ヨーロッパの基準となっています。そのため、ヨーロッパでは、複合フローリングの表面材に使われている木の厚みが2.5mm以上でなければ“Parquet”と呼ぶことができないのです。
2.5mm~ | Parquet |
0.7mm~2.5mm | Wood Floorings |
~0.7mm | Veneer Floorings |
出典:https://www.parquet.net/2020/02/types-of-parquet-floors.html
マルホンで取り扱っている挽板フローリングは、表面材に「鋸挽」によって製材された厚さ3mmの無垢材を使用しています。厚みのある挽板は作るのに手間はかかりますが、無垢材のような素材感や質感など、さまざまな魅力を楽しむことができます。
①無垢材のような豊かな表情を楽しめる
筬鋸を使って製材する挽板は、製材時に刃が揺れるため薄い板を作ることは難しく、2mm以上の厚みになります。マルホンの挽板フローリングは表面材に厚さ3mmの挽板を使用しています。厚みがあることで似たような木目ばかりにならず、無垢材同様に表情豊かな材面を楽しむことができます。
②浸透性塗料による塗装が可能
筬鋸によって製材された厚みのある挽板は、無垢材同様に浸透性塗料による塗装が可能です。浸透性塗装は木材にオイルなどの塗料を染み込ませるだけの塗装で、木本来の質感を楽しむことができます。突板フローリングや表面材の薄い挽板フローリングではオイルが十分に浸透できず吹き戻し**が起きてしまうため、ウレタン樹脂の塗膜で表面をコーティングしていることがほとんどです。厚みのある挽板だからこそ、浸透性塗装で無垢材同様の質感を楽しむことができます。
また、浸透性塗料で仕上げた挽板は、無垢材同様にキズが味になっていく様子を楽しんだり、シミができてしまった際には部分的に紙やすりでサンディングして補修するメンテナンスができます。また、ヨーロッパの基準同様に、表面を全体的にサンディングしてリフレッシュする再仕上げも可能です。
**吹き戻し:木材の許容量以上にオイルを塗ることで、一度内部に浸透したオイルが表面にでてきてしまう現象のこと。表面がべたついた状態になる
③ワイピング塗装が可能
ワイピング塗装とは、木材の導管(水を吸い上げる管)に塗料を擦り込み、それが乾かないうちに表面の塗料を拭き取ることで、導管に色を残し木目を際立たせる塗装方法です。仕上げの際に、拭き取りきれなかった塗料が残った木肌を削り取る工程を踏むため、厚みのある無垢材ならではの塗装と言えます。表面材の厚い挽板フローリングだからこそ、このような一手間を加えて木の魅力を引き立てることができます。
>見る木活かす木【716号】木目を際立たせる塗装 ワイピング
▲タモ挽板フローリング(FTME16-122)
▲ヨーロピアンオーク挽板フローリング
ワイピング塗装(FEKE58-441)
一般的な合板材は、材料が豊富にあり価格が安いことから、ラワン、ファルカタ、パイン、ユーカリなどの樹種をミックスしたものが多く、接着剤はF☆☆☆であるユリア・メラミン樹脂接着剤をキャッチャー剤***とともに使用してF☆☆☆☆の基準を満たしているものが大半です。
マルホンでは使用する全ての合板材を寸法安定性に優れたヨーロッパ産バーチをはじめとしたカバ材に限定しており、接着剤はユリア・メラミン樹脂接着剤よりもホルム放出量の少ないフェノール樹脂接着剤を使用しています。 また、表面材と合板材を接着するために使用している接着剤は、水性高分子イソシアネート接着剤を使用しており、この接着剤はホルムアルデヒドを一切含んでいないため、キャッチャー剤を使用しなくてもF☆☆☆☆の基準をクリアしています。
F☆☆☆☆ とはJIS・JASがホルムアルデヒドの放散量によって定めた4段階ある等級の最上位で、放散量(平均0.3mg/L以下・最大0.4mg/L以下)が小さく使用規制を受けない建材であることを示しています。それより下位の等級は使用割合が制限されています。
また、ヨーロッパ産バーチをはじめとしたカバ材は一般的に合板に使用される樹種と比較すると、価格は高いものの寸法安定性が良く、合板にしたときの見た目も美しく優れています。また、常に同樹種のみを使用することによって、ロットによる精度の違いが非常に少なく、高い品質を安定的に保つことができます。
***ホルムアルデヒドの放散を抑制する薬剤
無垢材を専門に扱うマルホンだからこそのこだわりが詰まった挽板フローリング。踏んだときの弾力や、室内の湿気をコントロールしてくれる調湿作用は本当の無垢材にはかないませんが、見た目や触れたときの質感は無垢材と変わりません。床暖房に対応する幅広の無垢フローリングをお探しの方は、マルホンの挽板フローリングを候補にぜひご検討ください。
マルホンの無垢木材について
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無垢木材の「質感」・「香り」・「あたたかみ」を実際に体感いただくため、 株式会社マルホンでは、浜松と東京、大阪、福岡の4箇所にショールームを開設。 いずれもフローリングやパネリングを始めとする、国内外の豊富な木材をご紹介しております。
専門スタッフが適材適所の木材選びをサポート。 目で見て、手で触れて、ダイレクトに感じて、ご希望に合った無垢木材をお選びください。