はじめに

 フローリングを選ぶ上での要素に『幅』があります。フローリングの幅は75〜90mm幅が一般的なサイズといわれていますが、狭いものでは35mmから広いものは210mmと様々です。下の写真からもわかるように、幅の違いはお部屋の印象も左右するため、幅に注目して選ばれる方は多いようです。
幅によって異なるのはお部屋の印象だけでしょうか。無垢フローリングの場合は見た目の印象だけでなく無垢材ならではの特徴があります。今回はその特徴の1.「コスト」、2.「フローリングの動き」、3.「木目や木柄の見え方」について取り上げます。

幅によってコストは変わるの?

 前段でお伝えしたようにフローリングの幅は狭いものでは35mmから広いものは210mmと様々で、幅は価格に関係してきます。より幅の広いフローリングは一本の丸太から限られた量しか生産できないため、フローリングの価値が上がる、すなわち価格が上がるということになります。それでは、同樹種で比較した場合、どのくらいの価格差になるのでしょうか。

例. ヨーロピアンオーク  90mm巾と150mm巾のコスト比較
●90mm巾  設計価格22,500円〜/㎡(税抜)
●150mm巾  設計価格31,000〜円/㎡(税抜)

実際は幅だけで価格のすべてが決まるわけではありませんが、同樹種で比較した場合、幅が広くなると価格が上がることがいえます。そこで“幅にこだわりながらもコストを抑えたい。”その上での選び方のポイントを紹介します。

 

ポイント1:グレード

グレードとは、樹種ごとに設定されているもので、節や辺材の入り具合や変色部の有無の程度を表します。あくまで商品の表情や個性を表すもので、性能に優劣はありません。同樹種で同じ幅で複数のグレードがある場合、選ぶグレード次第でコストをより抑えることができます。
基本的に、セレクト(プライム)グレードは、無垢材の風合いを残しつつも節や辺材、変色部が少なく比較的整った表情になります。そのため希少価値が高くなり、価格は高くなります。逆に節や辺材の入り具合や変色部を多く含むキャラクターグレードやラスティックグレードはコストを抑えられるというメリットがあります。また、コストの面だけでなく無垢の風合いをよりいっそう活かすことができるのも魅力です。

 

ポイント2:樹種による違い(広葉樹と針葉樹)

幅広のフローリングに興味がある場合は、広葉樹と針葉樹でコストの差が生じることを知っておくとよいでしょう。
そもそも、広葉樹の幹は太く曲がっていることが多く、枝分かれしているので、幅が広く長さがある材はとりづらくコストが上がる傾向があります。一方、針葉樹は成長が早く幹がまっすぐ伸びるので、幅が広く長さがあるものがとりやすく、同じ幅広フローリングの中でも広葉樹に比べるとコストメリットが期待できます。さらに、パイン、スギ、ヒノキなどの針葉樹は一般的に柔らかい材が多く、空気をたくさん含んでいるので、足触りのよさや木の温もりを感じられるのが魅力です。しかし、ある程度の堅さがある広葉樹に比べると傷がつきやすい一面があります。

見る木活かす木【665号】フローリングの堅さについて

無垢フローリングの幅によってどのくらい動きに差がでるの?

 無垢の木は呼吸しているかのように常に動いています。動きというとデメリットに感じてしまいますが、無垢材には空気が乾燥すると水分を放出して収縮し、湿気が多いと水分を吸収し膨張する性質があり、部屋の中に自然の調湿作用をもたらしてくれるというメリットでもあります。乾燥する冬場は収縮しフローリング間の隙間が開きますが、湿気の多い梅雨から夏場は膨張し隙間が狭くなります。無垢フローリングは季節ごとにこの膨張収縮を繰り返しています。
また、膨張収縮の動きはフローリングの長手方向よりも、幅方向の方が大きくなります。長手方向の動きを1とすると、幅方向の動きはおおよそ10となり、幅方向により動くということがいえます。
では、実際に幅の違いによってどの程度差がでてくるのでしょうか。今回は幅のラインナップが豊富なウォールナットを例に見てみましょう。膨張収縮の動きは樹種、施工現場の立地条件や、室内環境によっても異なりますが、例としてある条件を設定して計算します。

例.
<条件>
①含水率の変化
含水率10%のフローリングを室温25度、湿度44%の現場(平衡含水率:8%)に施工した場合
含水率の変化:2%
(フローリングの含水率が10%から8%へと下がるので、無垢フローリングは収縮する)②ウォールナットの膨張収縮係数:0.00232(板目、柾目の混入率をそれぞれ50%とする場合)

<計算式>
フローリングの幅方向の動き(mm)= ①含水率の変化(%) × ②膨張収縮係数 ×板巾(mm)

<結果>
ウォールナットの場合
57mm巾・・・約0.26mm収縮する
90mm巾・・・約0.42mm収縮する
130mm巾・・・約0.60mm収縮する
※結果の数値は施工現場の環境や樹種によって異なります。あくまで一例としてご覧ください。

含水率・・・木材中に含まれている水分量を表す指標。
平衡含水率・・・一定の温度、湿度の条件の中に長時間放置すると最終的に安定する含水率。

この結果からもわかるように膨張収縮の動きは幅が広くなるにつれて大きくなります。ただし、フローリングの隙間に対する感じ方は人それぞれですので、フローリングの動きが気になる方はそれを踏まえた上で選択するとよいでしょう。そうはいっても、木の動きによって支障がでるのは避けたいもの。より快適にお使いいただくためにも施工方法が重要となります。次に動きによるトラブルを回避するための施工ポイントを紹介します。

 

【動きによるトラブルを回避するための施工ポイント】

●無垢木材の膨張収縮の動きを抑えるためには、接着剤と釘(フロアーステープルまたはスクリューネイル)を併用し、床材をしっかりと固定することが非常に重要となります。
接着剤は、床材の裏面①釘の通過面、②材の中心、③雌実下やや内側の3箇所に筋状に塗布します(右図参照)。
注)実部分に接着剤を塗布すると、一箇所に大きな隙間を引き起こすため厳禁です。

●壁の納め方 図

●接着剤の塗布について 図

●スペーサーの利用

スペーサーはフローリング間にあらかじめ隙間をもたせる役割を果たします。この隙間(あそび)の部分が無垢フローリングが膨張した際の動きを吸収するので反りなどのトラブルを防ぐことができます。
※梅雨時期の施工においては、含水率計やデジタル温湿度計などを利用し、フローリング材が現場の環境に馴染んできたことを確認できた際には、スペーサーを使用せずに施工していただく場合もあります。
※挽板フローリング及び寄木張りフローリングは、スペーサーの使用は不要です。

 

●スペーサー 図

●スペーサー 図

●壁の納め方

スペーサーの利用に加えて無垢フローリングの膨張した際の動きを吸収するために壁面と床材の間に隙間(あそび)をもたせることで、膨張による反りなどを回避するとともに膨張による壁や柱への押し込みやきしみを防ぎます。床材は壁面に密着させず、巾木で隠れる寸法内で5㎜以上の隙間を設けてください。

 

幅の違いによる無垢フローリングの表情の見え方

 幅の違いにより無垢材が持つ木目や木柄、色ムラの見た目の印象が変わります。それは、表情豊かな無垢材ならではの特徴でもあります。では、実際にフローリングを全体に張り上げたときのイメージを見てみましょう。

 

 

このようにフローリングの幅は様々でお部屋の印象を変化させる要素でもありますが、無垢材の場合は見た目の印象だけでなく無垢材ならではの特徴をふまえて幅を選ぶのも大事なポイントです。幅にこだわって選んでみませんか。

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