NO.631 コト編

2007.02.19 | 接着剤 施工

無垢フローリングと接着剤ー施工に適した接着剤とその理由ー

はじめに

接着剤と聞いて、まず思い浮かべるのがお馴染みの「瞬間接着剤」や、子供の頃に使用した白い「木工用接着剤」などではないでしょうか。
身の周りを見渡してみると、接着剤を使用した製品であふれています。例えば自動車やパソコンといった工業製品はもちろん、郵便切手や虫歯の治療にも活用されています。
そんな接着剤は、無垢フローリングの施工においても欠かせません。今号では、無垢フローリング施工用接着剤にスポットを当ててお送りします。

接着剤の歴史

接着剤というと化学合成で作られたものというイメージですが、現在のような接着剤が開発されたのは、20世紀に入ってからで、それ以前は天然物由来のものを接着剤として利用していました。
最も古い接着剤は、アスファルト。その歴史は、人類が道具をつくり、使い始めた石器時代にまで遡ります。黒曜石などでつくられた鏃(やじり)を、木の枝に固定する際に使われるようなりました。

ピーテル・ブリューゲル(父)
「バベルの塔」(1565)

また、旧約聖書にも、かの有名なバベルの塔の建築にあたって、レンガをアスファルトで接着しながら建設したとされ、ノアの方舟にも水が入らないようにアスファルトでシールドしていたと記されています。
その他、身近なものでは、動物の皮を煮出して作った“膠(にかわ)”や、ご飯をつぶして練り上げた“続飯”、“漆”、“でんぷんのり”があります。

無垢フローリングの施工に適した接着剤とは

 接着剤にどんなものでも使用できる万能タイプは存在しません。どんな“素材”をどんな“用途”で使用するのかによって、様々な種類の接着剤が使い分けられています。では、無垢フローリングの施工に適した接着剤とはどんな種類の接着剤なのでしょうか?
木材なのだから、おなじみの木工用接着剤でよいのかというとそうではありません。

●木工用接着剤がNGな理由
無垢フローリング施工においては、木材だからといって白ボンドなどと呼ばれる木工用接着剤(酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤)を使用するのは、絶対に避けてください。

(1)接着剤に含まれている水分を無垢材が吸収してしまい、膨張の原因となる
木工用接着剤は、接着剤中に含まれている水分が蒸発して硬化するタイプ。そのため蒸発した水分を無垢材が吸収してしまい、思わぬトラブルを起こしてしまいます。

(2)床鳴りの原因
水分が蒸発して硬化するため、水分が抜けた分だけ硬化後の接着剤の体積が収縮します。そのため材の間に隙間ができ、その上を歩くと接着剤同士が接触し、床鳴りが生じることがあります。また、木工用接着剤は、熱が加わると柔らかくなり、冷却されると固まる性質と水分に弱い性質をもっているため、特に高温多湿の梅雨〜夏にかけて特に床鳴りが生じやすくなります。

●弾性をもつ接着剤 ウレタン系接着剤とエポキシ系接着剤
では、具体的に無垢フローリングの施工に適しているのは、どのようなタイプの接着剤なのでしょうか。
無垢フローリングは、温度・湿度の変化に合わせて膨張収縮する性質を備えているため、せっかく強力な接着剤を使っても、フローリングが伸び縮みすることによって、その動きに接着剤が対応できず、はがれてしまう場合があります。無垢フローリング施工用接着剤には、膨張収縮による木材の動きに対応し、かつその動く力を接着剤自身が吸収する“弾性”を有した接着剤が求められます。そんな弾性をもつ接着剤で、無垢フローリング施工に適している接着剤は、一液型ウレタン樹脂系接着剤エポキシ樹脂系接着剤です。これらの接着剤は、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒドを原料としない接着剤でもあり、また水分が蒸発して固まるタイプの木工用接着剤とは異なり、化学反応によって固化するタイプの接着剤のため、硬化後の体積収縮がなく、接着剤が原因の不快な床鳴りを防止してくれる効果があります。

[接着剤による床鳴り防止効果試験]
フローリング材と下地合板にウレタン樹脂系接着剤と釘を併用した試験体(接着剤は300㎜ピッチでビート状に塗布)と、釘のみで施工した試験体を作成、1日養生後、歩行者が各々の試験体の上を30歩あるき、床鳴りした回数を測定しました。

このように、接着剤を用いることによって、フローリング材と下地材とが一体化されるため、床鳴りの発生を防ぐことができます。

 

《ウレタン樹脂系接着剤の利点》

(1)優れた作業性
床施工用ウレタン系接着剤のほとんどは一液型タイプのため、使用前の計量や混合の手間が省け、かつ計量ミス、混合ミスという人為的ミスが発生しません。

(2)低温硬化性
エポキシは5℃以下の低温で固まりにくいが、ウレタンは2℃以上であれば固まるため、冬場の接着にも対応します。

《エポキシ樹脂接着剤の利点》

(1)優れた初期接着力
エポキシ系接着剤は、貼り付けた直後から接着力を発揮するため、ヘリンボーンや市松といった寄木張りの施工の場合は、ウレタン樹脂接着剤に比べて作業しやすくなります。

(2)異素材同士の接着にも効果的
エポキシ樹脂接着剤は、異なる素材の接着にも適しています。
コンクリートに直に施工しなければならない直張り工法の場合、無垢フローリングにはカルプクッションが張りつけられています。このカルプクッションとコンクリートという異なる素材を接着する場合、エポキシ樹脂系接着剤が有効です。エポキシ樹脂系接着剤の多くは、一液型のウレタン系接着剤と異なり、使用する直前に主剤と硬化剤の2つの液を混合しなければなりません。広い面積に使用する場合は、手間になるという点から、通常、根太工法では一液型ウレタン樹脂接着剤(ボンドKU928-X㈱コニシ製等)を使い、直張りや寄木張りではエポキシ樹脂接着剤(ボンドE350R㈱コニシ製等)を使うことが一般的になりつつあります。

施工上の注意

(1) 接着剤は、適量を守って使いましょう。

(2) 接着面のホコリや汚れは、しっかり取り除きましょう。

(3) 接着剤にとって、油分は大敵。特にオイル塗装品の場合、接着面にオイルがしみないようにご注意下さい。

(4) 塗布の際、実(さね)の部分に接着剤をつけないよう注意してください。実部分に接着剤が付着してしまうと、幅方向に固定されたフロアー材が一体となってしまい、フロアー材一枚毎の膨張収縮に比べ、大きな寸法変化(隙間)を生じる場合があります。

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