“香り”は私たち人間にとって欠かすことはできないものです。さらに最近の研究では、“香り”と記憶はつながっていて、“香り”を脳が感じるとその記憶が呼び戻されるという効果も証明されているほど、“香り”は私たちにとって重要なものです。
今号では、そんな“香り”と“木材”の関係についてご紹介します。
ご存知の通り、木の香りは気分を爽快にします。ほのかな木の香りがストレスを解消し、心身をリラックスさせてくれます。木の香りが快適なのは、様々な方法により実証されています。被験者にスギのチップの香りを吸入してもらい、血圧を測定したところ、吸引前と比較して吸引から40~60秒で血圧が低下しました。血圧はストレスを感じると上昇します。血圧が低下したということは、スギの香りによって身体がリラックスしたと解釈できます。
また、木の香りのもとでラットの睡眠時の脳波には、心地よく眠っているときに現れるα波が平均の20〜30%も増加したことが報告されています。
木の香りのもとでは、ストレスによってあらわれる精神的な発汗が少なくなり、脈拍も安定します。さらに、木のもとで睡眠をとると疲れが早くとれ、次の日の作業効率を上げることも実証されています。人知れず、香り続ける木の香り。人に安らぎをあたえるだけでなく、ダニなどの害虫を寄せ付けない効果やカビを抑える効果も発揮する不思議な力をもつ木の香り。木の香りは、明日への活力をも作り出してくれるのです。
では、そんな木の香りの正体とはいったい何でしょう。それは、木材中に存在する“フィトンチッド”と呼ばれる精油成分です。樹種のちがい、個性を生み出しているものこそが、フィトンチッド。その種類、含有量は、樹種によって大きく異なり、成分によっては、特定の樹木にしか含まれないものもあります。フィトンチッドは、木の香りだけでなく、色などにも影響を与えるため、その量や種類がその樹種の個性を生み出しているのです。
一般的に、木の香りといって、みなさんが思い起こされるのはスギ、ヒノキに代表される針葉樹の香りです。実は、ナラ、メープルのような広葉樹にはほとんど香りはありません。
このように木の香りは、樹種の違いによりその強さが異なるため、持続期間を断定することはできませんが、針葉樹をふんだんに使用した住宅は築5年以上経過しても木の香りが持続するともいわれています。住人は慣れてしまって気づかなくとも、初めて訪れる人から「木のいい香りがしますね」と言われることがあるようです。
ハードサイプレス 無垢フローリング
ここでは、香りを有する代表的な無垢フローリングを紹介しましょう。
■ヒノキ
ヒノキにはα-ピネンなどのモノテルペンのほか、α-カジノールなどのセスキテルペン類が多く含まれています。さらにこれらの芳香成分により、ヒノキ材には、リラックス効果や抗菌作用やダニに対する繁殖抑制効果があることが知られております。
■スギ
スギには、δ-カジネンやβ-オイデスモールなどのセスキテルペン類が含まれ、心地よい芳香の他、ヒノキと同様、抗菌作用などがあります。さらに日本酒の樽にスギが用いられるのも酒にスギ独特の香りつけとともに、セスキテルペン類の防腐作用を利用した先人たちの知恵といえるでしょう。
天竜スギ 無垢フローリング
■ハードサイプレス
オーストラリア産のハードサイプレスは、シトロネル酸やグアイオール、α-,β—,γ—オイデスモールという成分が含まれており、独特の芳香以外にも、シロアリがつきにくく、耐久性が強い特徴があります。さらには、最近の研究では、ハードサイプレスの香り成分には肥満抑制効果があるという研究報告もあり、メタボリックシンドロームが取り出たされている昨今、さらなる研究を期待したい木材でもあります。
これらのフローリング以外にも、パネリング材として、ウェスタンレッドシダーやベイヒバ、スプルースなど、香りの強い木材は他にも様々あります。
人によって香りの嗜好は異なります。実際に木を嗅いでみて、その「香り」が「落ち着く」と感じるとき、それがあなたにとって必要な素材のひとつかもしれません。
参考文献
恒次祐子,森川 岳,宮崎 良文,(2005) 「木材の香りによるリラクゼーション効果」『木材工業』 , 60, 598-602
マルホンの無垢木材について
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無垢木材の「質感」・「香り」・「あたたかみ」を実際に体感いただくため、 株式会社マルホンでは、浜松と東京、大阪、福岡の4箇所にショールームを開設。 いずれもフローリングやパネリングを始めとする、国内外の豊富な木材をご紹介しております。
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