NO.612 コト編

2006.04.20 | メンテナンス 塗装

メンテナンス シリーズ第2回ー家具の塗装とメンテナンスー

はじめに

 メンテナンスには、「維持」や「保全」といった意味があります。 無垢の木のテーブルや椅子を、よりよい状態を保ちながら使っていくために、どのようなメンテナンスが必要でしょうか。
基本は前回の床の場合と大差はありませんが、家具はより生活に身近な道具であり、インテリアのなかの装飾的な役割も担っています。 また、お手入れをすることでより魅力が増し、愛着もどんどん湧いてくることでしょう。たとえ傷が付いたとしても、補修をしながら使い続けることで味わいが増していく点も、無垢の木の家具ならではです。

最近はメンテナンスフリーの家具もあふれていますが、そうした家具は新品のときが最高で、使うことが「消耗」になる物も少なくありません。メンテナンスフリーということは、メンテナンスをしなくてもいいということですが、裏をかえせばメンテナンスをすることがむずかしいということです。
使い捨てが当たり前になっている現代ですが、使い込めば、使い込むほど味わいが増すものを一生大切にしていくという考え方が見直されてきています。

適切な対処をするために

家具のメンテナンスでよく聞くのは、乾拭きをして、汚れたら中性洗剤で落とす、という方法でしょう。
これは表面がウレタン仕上げの家具なら、中性洗剤でごしごしやっても構いません。ラッカー仕上げだと耐薬品性がありませんから、かえって染みになったりします。

普段の手入れは、乾拭きや濡れ布巾で拭く程度で充分です。うっかりマジックインキがついてしまった、というような場合はシンナーで落とすしかありません。
その場合、ウレタン塗装の表面の光沢が損なわれることがあります。ラッカーの場合は、汚れと一緒にラッカー自体もシンナーが落としてしまう可能性があります(ラッカーには耐シンナー性がありません)。
まずは目立たないところで試してみましょう。

このように、表面の仕上げによって違いがありますから、家具を購入するときに、メンテナンスの方法も聞いておくと、適切な対処ができます。

オイル系の自然塗料仕上の場合は、定期的に自分で塗装し直すことで、よりよい状態に保つことができます(これは前回の床の巻でも紹介したので、611号をご覧下さい)。

無垢木材のテーブル 例)ホワイトアッシュ オイル仕上げ

乾燥、日焼けは大敵

テーブルにつきもののトラブルとして、輪染みや焼けこげなどがあります。
クリアーのオイル系の塗料は、輪染みの心配は少ないのですが、ワックス系は表面の薄い塗膜が、水と反応して白くなることがあります。濡れたコップやよく冷えた缶ビールを放置したりすると、輪染みがつくのはこのためです。
状態がひどくて気になるようなら、サンドペーパーで擦って、上からあらたに塗装し直すと、ある程度は目立たなくなります。色の付いた仕上げをしてあるような場合には、自分で色合わせをするのは難しいので、プロに相談してみましょう。
また、使用の際にできてしまったキズも味わいだ、と思ってそのままにするという選択もあります。

部屋のどの場所に置いてあるか、ということも、家具の寿命に関係があります。
エアコンの風が直接当たるようなところに置いていませんか?無垢の木は、膨張、収縮を繰り返していますから、むやみに乾燥する場所にあると、反ったり割れたりする原因になります。エアコンを避けるのは、スペース的に難しいことも多いでしょうが、直接当たらないように工夫するだけでも違います。

摺漆(すりうるし)仕上げのテーブルなどは、日当たりにも注意が必要です。漆は表面の塗膜の強度はありますが、紫外線に弱い性質があります。日が当たる場所と、当たらない場所では、色がはっきり変わってきます。

家具は女性のお肌と同様、乾燥、日焼けは大敵です。

箪笥や椅子は

 無垢の木の家具といえば、昔なじみの桐箪笥もそのひとつ。
桐は防虫、防カビ、耐火性など箪笥にもってこいの性質があります。しかし柔らかく、傷になりやすい。 そして桐箪笥には塗装はしてありません。昔から、引出しに大きな金具がついているのは、引出しをあけるときにじかに触って手の油がつくことを防ぐため。伊達の飾りではないのです。経年変化で色が変わったり、いよいよ汚れがひどくなったら、削り直して代々使うことができます。よく考えられた収納家具です。

では、椅子はどうでしょう。
無垢の木の椅子といって思い浮かべるのは、ハンス・J・ウェグナーの「Yチェア」。
Yチェアは「ソープフィニッシュ」という仕上でできています。 ソープフィニッシュは、文字通り自然石鹸(純石鹸成分が98%以上のもの)を用いた塗装方法です。石鹸の油脂分が木部に残って、それが表面を保護します。しかし最も簡単でシンプルな仕上げ方法ですから、汚れはつきます。汚れたら、やはりサンドペーパーで擦ってから、自然石鹸を30〜40℃の湯に溶かして40倍くらいに薄めた液で洗うと、ある程度きれいになります。しかしこれは汚れを落とすというよりは、よりよい経年変化のための栄養補給のようなものと考えてください。

いずれにしても無垢の木の家具は、汚れや傷も含め、ともに時間を重ねていけるところに魅力があります。あまり神経質にならず、楽しんで使うことが一番のお手入れです。

オイルメンテナンス後のご注意

最後に、オイル系の塗料を使ったメンテナンスのあとの作業について、注意事項をひとつ記しておきます。
それは塗ったあとの布の始末です。拭き取りに使用した布やスポンジなどを、そのまま丸めて放置すると、オイル系塗料は自然発火する可能性があります。
植物油の多くは乾性油と呼ばれ、乾燥する過程で空気中の酸素を吸収し、酸化反応します。その際に、わずかですが酸化反応熱が発生します。この熱が重ねた布などの中で蓄熱されて、稀に発火するのです。油分を含んでいても、布を広げて置いてあれば、発火の可能性はとても低いのですが、重ねたり、丸めたりは禁物です。
塗り終わった布は、必ず充分に水につけてからビニール袋に入れ、可燃ゴミとして処分してください。(ちなみに、オイル系塗料を塗ったからといって蓄熱はされませんから、家具自体が発火することはありません。ご安心を。)

▼製品情報
Arbor植物オイル
Arbor蜜蝋樹脂ワックス

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