硬いコンクリートの上を歩いていると、すぐに脚が疲れてしまい、歩きにくいと感じたことはありませんか?これは、コンクリートが足から受ける力を吸収せず、ダイレクトに足に跳ね返してしまうためです。コンクリートの上を歩く際、体重の約2.5倍もの衝撃が足腰にかかるといわれているほどです。
逆に、毛足の長いカーペットのように軟らかすぎても、力を吸収してしまい、足に余分な力を入れなければならないため、歩きにくさを覚えます。新雪の上やぬかるんだ土の上を歩いている様子を想像すればイメージしやすいかもしれません。
この衝撃吸収力について興味深い実験結果を紹介しましょう。畳・木材・プラスチック・大理石の上に砂を詰めたガラス球を落下させ、素材毎の割れる高さを測定したもので、落下高さが高いほど衝撃吸収力が大きいと判断することが出来ます。その結果、木材は30〜40㎝で、畳の2mには劣るものの、プラスチックの10〜20㎝、大理石の15㎝と比べて衝撃吸収力が大きいことが分かります。
木材が衝撃吸収力を備えている秘密は、その構造にあります。木材をミクロの視点で見ると、パイプ状の細胞が集まってできていて、衝撃が加えられると、まず表面の細胞がつぶれ、次の層の細胞、その次の細胞がつぶれるというように、加えられた衝撃を跳ね返すまでに、ある程度の時間を要します。衝撃力の大きさはそれが跳ね返るまでの時間に反比例するため、時間のかかる木材は衝撃力が弱まる、衝撃を吸収しているということになります。
人にとっての「歩きやすさ」を考えたとき、床の素材は硬すぎず、かといって柔らかすぎず、適度に衝撃を吸収し反発する“程よい硬さ”であることが条件と考えられます。これを満たしている素材の1つが木材であり、床材に適した素材とされている理由です。
学校などの体育館の床や、ボーリング場のアプローチや跳び箱で使うロイター板、野球のバットなど、スポーツの様々な場面で「木」が使用されています。これも木が持つ衝撃吸収力や弾力性が人にやさしいため。
例えば、野球のバットには木製と金属製があります。打ち損なってバットの先に当ててしまったとき、手にしびれるような強い衝撃を受けたことはありませんか?ボールを打ったときの衝撃が、バットを握っている手元に伝わる“強さ”を比較すると、スイートスポット(芯)に当たったときは両者変わりませんが、そこを外れたときには金属製よりも木製の方が、伝わる衝撃が小さくなります。これは木が金属より衝撃を緩和する効果に優れていることを示したもので、工具や大工道具、農機具などの柄に木材が用いられているのも、木材の衝撃緩和効果が活かされている例です。
同じ木材でも、その衝撃吸収力はさまざま。
例えば、スギやキリのように柔らかい木材とカリンやイペのような硬い木材では衝撃吸収力も異なります。硬い木材に比べ、柔らかい木材であるほど、衝撃が跳ね返るまでの時間が長くなるため、衝撃が吸収されやすく、足腰への負担がより少ないといえます。
床材には、複数の機能、時には相反する機能が同時に求められます。例えば、人が歩いたくらいで擦り減ってしまっては困りますし、かといって絶対に擦り減らない硬い床では足腰に負担がかかり、さらには転倒したときに危険が生じます。すなわち床材には衝撃吸収性のほか、耐摩耗性・耐久性などが求められます。
木材は、これらの性質をバランスよく持ちあわせた素材です。さらに用途や要望に応じて、衝撃吸収力の優れた木材、硬く耐摩耗性に優れた木材など、ご希望により合う材を選ぶことができる点も木材のよさといえるでしょう。
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