はじめに

最古の正史である『日本書紀』には「スギとクスノキは船に、ヒノキは神殿に、マキは死者を弔う棺に使用するよう」と記されています。また、古語において最高のものを現す「日」をとって「日の木」と呼んだことがその名の由来となったとも言われています。ヒノキは、古くから最高級の建築材として知られてきました。
しかし一口に「ヒノキ」と言っても、育つ場所によって様々な特徴があります。今回はFSC®認証を取得し、環境に配慮した「尾鷲ヒノキ」をご紹介します。熊野古道の道中に生育し、高い品質を誇る「尾鷲ヒノキ」を贅沢なフローリングへ仕立て上げました。

画像1:尾鷲ヒノキ立ち木

古より愛されるヒノキの魅力

 カンナで削られたつややかな肌と、柔らかく温かい触り心地が魅力的なヒノキ。しかし、ヒノキの魅力はそれだけではありません。

■耐久性

国産のヒノキは国内最高級との呼び声も高い建築材です。水や湿気に強く、高い耐朽性を誇ります。建立後1000年を過ぎた今なお威容を誇る法隆寺はヒノキで造られており、その卓越した耐久性の裏付けとなっています。
その法隆寺において、昭和9年より20年掛かりで行われた大改修の際のエピソードも有名です。改修前、屋根を支える部材である垂木は、長年の瓦の重みにより曲がっていました。しかし、改修に際して瓦の屋根土を降ろすと、元の姿に戻ったと言われています。伐採後の寿命は、マツは400年、スギで500~600年、ヒノキはなんと2000年とも言われており、その耐久性には目を見張るものがあります。

■香り

心地の良い香りも、ヒノキの大きな魅力です。アロマテラピーの世界でも注目されているその香りの正体は、α-ピネンやα-カジノールといった芳香成分です。これらの成分により、ヒノキ材には、リラックス効果や抗菌作用、さらにはダニに対する繁殖抑制効果もあることが知られています。その作用を活かし、料理店のカウンター、まな板などのキッチン用品や、芳香剤などに使用されることもあります。
建立から1000年以上経った法隆寺でも、柱の表面を数ミリ削ればヒノキの良い香りがすると言われていますので、丁寧にメンテナンスをして頂くことにより、長い期間、その香りと効能を感じて頂けるのではないでしょうか。

 

▼【663 号】木の香りの効能
https://www.mokuzai.com/contents/column/incense/

 

画像2:ヒノキ鉋屑(かんなくず)

世界遺産の道

2004年、世界遺産に登録された熊野古道。その道の途中、伊勢路で随一の美しさを誇る馬越(まごせ)峠の石畳を彩るのが、ほかでもない尾鷲ヒノキです。
前述の『日本書紀』にも登場する熊野古道は、イザナミノミコトが葬られた熊野へと続く道の総称です。「熊野」の由来には諸説ありますが、「クマ」には「辺境の地」「神の隠れる場所」と言った意味もあり、人々の畏怖の対象であったと言われています。平安時代、高貴な人々を中心に広まった熊野信仰は、室町時代に入り、浄土信仰の広まりとともに一般庶民へも広がりました。その広がりは、大挙する人々を蟻に例えた「蟻の熊野詣」という言葉からも分かるところです。江戸時代の作家・十返舎一九による『東海道中膝栗毛』にも、信心が厚いことの例えとして「伊勢へ七度熊野へ三度、愛宕さまへは月参」という一文が登場しています。

画像3:馬越峠

尾鷲ヒノキならではの魅力

 上述した様々なヒノキそのものの特長に加え、尾鷲ヒノキならではの特長もあります。世界遺産・熊野古道に育つ尾鷲ヒノキは、その生育環境によって魅力的な特長を持つに至りました。山地の目と鼻の先に熊野灘が迫る尾鷲地方は、非常に急峻な地形となっています。黒潮が運ぶ海からの水蒸気が、切り立った大台山系にぶつかり雲をつくるため、尾鷲は全国でも歴代3位*の多雨地域として知られています。急峻な地形における多量の雨は土壌を浅くするため、そこに育つヒノキにとっては過酷な環境を作り出します。その苛酷な環境と温暖多雨な天候に加え、手入れの行き届いた人工林にて、強く美しい尾鷲ヒノキができるのです。

*全国歴代ランキング(気象庁)
http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/view/rankall.php?prec_no=&block_no=&year=&month=&day=&view=

画像4:強度比較データ

■強い尾鷲ヒノキ

最大の特徴は、夏から秋の終わりにかけてできる「晩材*」が多いことにあります。温暖多雨な尾鷲では、晩夏から秋の時期にかけてもヒノキが成長します。そのため、晩材の比率が高くなり、年輪の間隔が樹皮まで緻密で一定となるのです。
晩材は細胞が小さく、良く締まっているため、堅く、強度も高いのが特長です。そのため、尾鷲ヒノキの強度は一般的なヒノキよりも高く、より粘り強いと言えます。
高い強度のため、関東大震災の際、尾鷲ヒノキの柱を使用した住宅の倒壊が少なかったとも伝えられ、そのことが尾鷲ヒノキを有名にしたのです。*晩材…1年の成長期間のうち、はじめに形成された材を早材、後半に形成された材を晩材という。

 

■美しい

晩材には、色が濃く、油脂分を多く含むという特長があります。そのため晩材の多い尾鷲ヒノキは、通常のヒノキよりも光沢があり、見た目も非常に美しいのです。
また、通常は時間を経るごとにあめ色に変わっていくヒノキですが、尾鷲ヒノキは鮮やかなオレンジ色へと色づいていきます。時の経過とともに美しく変わるその表情をお楽しみ頂くことができます。

画像5:尾鷲ヒノキと一般的なヒノキの違い

環境に配慮した認証材

当社取扱いの尾鷲ヒノキはFSC®認証を取得しています。昨今のオリンピックでは認証材の使用が主流となりつつあり、2020年の東京オリンピックでも、競技場や関連施設に認証材が採用される方向です。
FSCの森林認証の目的は「環境保全の面から見て適切で、社会的な利益にかない、経済的にも持続可能な森林管理」の推進です。FSCロゴマークが使用されている材を選択すれば、環境に負荷を与えることなく生産された木材を選び取ることができます。認証材を選択することで、環境保護の手助けとなるのです。

弊社では、日本で初めてFSC認証を取得した速水林業のヒノキを使用しています。

▼速水林業
http://www.re-forest.com/hayami/

▼FSCジャパン
https://jp.fsc.org/jp-jp

 

画像6:FSC®️ロゴマーク

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