2015.12.26 | 適材適所
無垢材を選ぶ際、ほとんどの方が「色」や「巾」、「木目」といった「見た目」を一番に気にされます。もちろんお好みの内装や家具との兼ね合いで、「見た目」はとても重要な要素です。
しかし、実際の暮らしを想像してみてください。「見た目」以外にも、さまざまな用途に応じたご要望があるのではないでしょうか。例えば「水周りに使用したい」「ペットを飼っている」「素足で過ごしたい」「土足、重歩行でもOKなものを探している」など…。
今回の「見る木活かす木」では、“生活シーンに見合った床材を選ぶ”ということに着目してみましょう。
湿度が高い場所で木材を使用する場合、虫害や腐朽菌の繁殖などで傷みやすくなります。こうした場所では水に強く、かつ腐りにくい木を選ぶことが必要になります。古くから船舶の甲板には無垢材が使われており、例えば、練習船の初代日本丸、客船のクイーンエリザベス2世号、戦艦三笠などで見ることができます。そうした船舶の多くの甲板には古くからチークが使われてきました。
そもそもチークには油分が多く含まれ、その油の中に「tectoguinone」という殺虫成分も含まれているため、虫害にも強く、打ち込んだ釘が錆びないことからです。そのほかハードサイプレス、ヒノキ、青森ヒバなども水や腐朽に強い木として有名です。
日本は古来より豊かな森林に恵まれ、さまざまな環境・状況の中で木材を使用してきました。奈良時代に成立した、日本に伝存する最古の正史と言われる『日本書紀』神代の巻に、スサノオノミコトの説話として、
「韓郷の嶋には、これ金銀あり。たとひ吾が児の所御す国に、浮宝(舟) 有らずば、未だ佳からじ」とのたまひて、乃ち鬚髯を抜きて散つ。即ち、 杉となる。また、胸の毛を抜き散つ。これ檜になる。尻の毛は、これ柀 になる。眉の毛は、これ樟になる。すでにしてその用ひるべきものを定 む。すなはち稱してのたまはく。「杉および樟、この両の樹は、もつて 浮宝(舟)とすべし。檜はもつて瑞宮(宮殿)をつくる材にすべし。柀 はもつて顕見蒼生の奥津棄戸(廟)にもち臥さむ具(棺)にすべし。そ のくらふべき八十木種、みなよく播し生う」とのたまふ。
とあります。「抗菌作用が高いスギ(杉)とクスノキ(楠)は船に、腐りにくく強度も高いヒノキ(檜)は神殿に、耐湿性に優れるマキ(槇)は死者を弔う棺に使用するよう…」という意味です。これらの用途も、決して適当に決められているのではなく、それぞれの特性を見極めたものであり、まさに歴史的にも木材は適材適所に使われてきたことが分かります。
みなさまが思い描くライフスタイルはどのようなものでしょうか?
「色」「巾」「木目」といった「見た目」の印象に加えて、おひとりおひとりの環境や状況に寄り添った材選びのヒントにしていただければ幸いです。
マルホンの無垢木材について
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