天然材料を主成分にしている自然塗料は、石油系の合成樹脂塗料に比べて、木材の保護という点においては弱いけれど、傷や汚れの経年変化が、木材という天然材料ならではの味わいになっていきます。せっかくの木材ですから、色や木目はもとより、手や足で触ったときの感触も含め、永く愛着をもって楽しみたいものです。
そんな自然塗料について、詳しく解説しましょう。
ここ十年ほどの間に、環境と健康に対する世の中の関心が、とても高くなりました。家のなかの建材が放出する化学物質が、人体に悪影響を及ぼすシックハウス症候群は社会問題になり、国土交通省は建築基準法を改正して、平成15年7月から建材の規制を定めました。
こうした流れのなかで、木材はもちろん、自然塗料などの自然材料が、年々注目されるようになりました。
ではそもそも、自然塗料とは、どういうものでしょうか。法的な決まりはありませんが、あえて定義をするならば「原料、製造、塗装、使用、廃棄という、塗料のサイクルのあらゆる段階で、すべての生態系に負荷を与えず、エネルギー消費量が小さいもの」。人体にも環境にも、悪影響の少ない塗料のことです。
自然塗料は、主成分によって5つに大別することができます。
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1.オイル系
亜麻仁油、荏胡麻の油、桐油、ひまわり油などの植物油を原料にしたもの。油100%のものと、柑橘類の皮油(リモネン、オレンジシトラール、レモンオイルなど)、マツ科の樹皮からとれるガムテレピン油などを溶剤にしたものがあります。
2.油ワニス系
ワニスとは、樹脂を溶剤に溶かしたもの。主に樹木からとれるダンマル、コパール、松脂などの天然樹脂を、植物油の溶剤に溶かしたものを油ワニスといいます。
3.セラックワニス系
昆虫のラック貝殻虫の分泌物を精製してできるセラックを、アルコールに溶かしてワニスとしたもの。
4.ワックス系
蜜蝋、カルナバ蝋、キャンデリラ蝋など、蝋を主成分にしたもの。溶剤を加えて、扱いやすくしたものもあります。
5.オイルワックス系
オイルとワックスを組合せたもの。
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樹脂が含まれるために、(合成樹脂ほどではありませんが)塗膜を形成するのは、2.油ワニス系、3.セラックワニス系のワニス系の塗料です。 これらはニスを塗ったような塗膜を形成するので、木材の温もりが損なわれてしまいます。
一方、1.オイル系、4.ワックス系は塗膜が弱い含浸型塗料です。木材内部へ浸透して保護するタイプですので、無垢の温かみは損なわれません。しかし、その両方を合わせた5.オイルワックスになると、含浸型塗料には違いないのですが、ワックスが表面に残りやすくなり保護塗膜の役割も果たします。
弊社で取り扱っている塗料は、自然塗料の中でも、特に自然素材だけにこだわった1.オイル系、5.オイルワックス系を取り扱っております。(詳しい情報は、下をご覧下さい。)
安心して使える自然塗料は、素人でも扱いやすいという点も魅力です。最近は、家づくりに参加したいお建主様も増えています。塗装に関しては、内部も外部も全部自分で塗ったというケースもあります。そこまでできなくても、家具だけは塗りたいとか、趣味と実用を兼ねてみたい人は、少なからずいるはずです。コストが削減できるという理由の他に、やはり何と言っても「楽しいから」。住み始めてからの愛着も違ってこようというものです。そうやって自分で塗ってみると、手入れをすることが億劫になりません。
その場合、塗り方はプロに教えてもらいましょう。というのも塗料は、場所の条件や季節によっては乾燥に時間がかかります。何度塗っても乾かなかった、というようなミスのないようにするために、塗装のプロや塗料メーカーにあらかじめその条件を聞いておくといいでしょう。ポイントさえ押さえておけば、とっても簡単です。
また、アレルギーなどの症状を持っている人の場合は、主成分を確認してから使いましょう。天然材料だから誰にでも安全ということではなく、成分によっては、体質にあわないものもあるからです。自然塗料は、自分の暮らしを、自分の体を見つめ直すきっかけにもなるのです。